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〔文化財保存の観点からの各部屋配置概念図〕[文化財公開施設の計画に関する指針]平成7年8月 文化庁文化財保護部○文化財公開施設計画の基本的な考え方 文化財(美術工芸品等)を広く公開することは、近年における国民の文化に対する関心の高まりの中で、文化財をより身近なものとし、文化的生活の向上に資する観点から積極的に推進していく必要がある。しかし、我が国の文化財の多くは、脆弱な紙、絹、木材等を素材としており、それぞれの材質に則した保存上の対応が求められる。 文化財公開施設の計画に当たっては、このような我が国の文化財の特質を踏まえ、文化財の保存に重大な影響を及ぼすことのないよう、施設・設備等について、以下の基本的な考え方に基づき検討を進める必要がある。 また、検討に際しては、当初の段階から文化財の展示・保存について経験と知識を有する学芸員を参画させることが望ましい。1.建設予定地の環境、建物の配置が文化財の保存・公開にふさわしいものであること。2.建物は、耐火・耐震性能に配慮し、安全性を確保していること。3.建物内の展示室、収蔵庫等の配置が展示、収蔵、管理等の面から機能的であり、かつ、十分な広さを確保していること。4.展示室、収蔵庫等の設備が、適切な展示及び保存環境を確保していること。5.防火・防犯等の各設備が適切に配置されていること。○文化財公開施設計画の留意事項・建物設計ア.建物は、耐火・耐震構造とする。イ.建物に地下部分を設けた場合は、底盤に防火措置を施すとともに、外壁の防水措置は地下部分だけでなく地表面よりやや上まで施す。特に地下に収蔵庫・展示室を設ける場合は、防水に留意する。エ.収蔵庫・展示室は、外部の環境からの影響を極力受けにくい設計とする。・設備設計ア.空気調和設備(ア)空調系統は、展示室と収蔵庫とに分離する。特に、収蔵庫の内部についても、文化財の材質等に応じて分離することが望ましい。(イ)収蔵庫の空調は、庫内だけでなく、二重壁内の空気層にも行うように配慮する。イ.照明設備 文化財が置かれる空間には、紫外線除去を施した蛍光灯や白熱灯など紫外線を出さない光源を用い、温度上昇を避けるとともに、文化財の材質に応じて調光可能な装置を備える。・各部屋の配置設計ア.展覧区画、保存区画、管理区画を明確に分ける。イ.収蔵庫・展示室等各部屋の配置に当たっては、文化財の移動を安全、かつ機能的に行えるように、複雑な動線や段差を避ける。ウ.文化財が置かれる部屋の防火区画は、個々に完全な独立区画とする。展 示収 蔵搬出入口〔文化財保存の観点からの各部屋配置概念図〕普 及管 理管理動線文化財の動線調 査・修 理・写 場(展覧区画)(保存・管理区画)113
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○主要な施設等の設計 文化財公開施設の計画に当たっては、文化財の保存に対する配慮が不可欠であり、収蔵庫はもとより、保存の場としての機能を有する展示室についても、文化財保護の観点から、収蔵展示(鑑賞者や展示効果に対しても配慮しつつ、収蔵しながら展示する。)の考え方にのっとり収蔵庫と同一の保存環境を実現する必要がある。また、燻蒸施設や調査・整理・修理室等の作業スペース、搬出入口、荷解場、エレベーターなどの付帯施設等についても、文化財の保存環境の維持、安全の確保を図る必要がある。このため、以下の点に留意すること。・収蔵庫ア.地下水や日射の影響を避けるため、地階・最上階・南西に面するなどの位置に配置しないことが望ましい。イ.収蔵庫の床面積は、展示室の床面積の半分を目安とするが、将来を見越して十分なスペースをとることが望ましい。ウ.収蔵庫には必ず前室の機能を果たす十分なスペースを確保し、庫外の影響が庫内に直接及ばないようにする。エ.間仕切壁は二重壁とし、空気の流通が可能な空間を確保する。オ.収蔵庫の外壁が外部と面する場合、結露などの点検のために、外壁と接する二重壁には室内側から点検口を設け、二重壁の間に点検用の空間を確保する。カ.収蔵庫内の床材・壁材等は、脂、粉塵等の放出によって文化財を汚染するおそれがないものとし、特に、内壁材には、吸放湿性に優れたものを使用する。キ.収蔵庫の扉は、出入口は原則として1ヵ所とし、密閉性、防火性に優れたものを設置する。ク.収納棚等は、地震等による移動、転倒、落下及び収納品の落下防止を考慮したものとする。ケ.収納棚等は、空調の吹出・吸込口の位置を考慮して配置するとともに、庫内の出入口付近のスペースは広くとる。コ.漏電防止のため、収蔵庫内の機器類の電源は、収蔵庫外から切れるように設計する。・展示室・展示ケースア.外光の入る開口部は、原則として設けない。イ.鑑賞者の出入等により、展示室が著しい外部環境の影響を受けることがないように設計する。ウ.収蔵庫と同一の保存環境を実現するとともに、防犯上からも展示ケースの使用が必要である。展示ケースの設計については、以下の点に留意すること。(ア)展示物の大きさや展示作業上の安全性、機能性及び耐震性を考慮して設計をする。(イ)ケース内の温湿度調整法にはおおむね次の方式があるが、環境や施設計画、将来の管理・運営を十分に考慮した上で、採用することが望ましい。(a)調湿剤使用方式:密閉度の高いケースを用い、調湿剤で湿度を一定に保つ方式である。調湿剤の管理を適切に行う必要がある。(b)空調方式:空調によってケース内の温湿度を一定に保つ方式である。吹き出し口からの風が直接文化財に当たらないように考慮し、かつ恒常的に空調を行う必要がある。(c)自然換気方式:自然換気により、展示室内の空気をケース内に導入する方式である。展示室内を恒常的に空調して温湿度を一定に保ち、かつ室内の空気の汚れがケース内に直接流入しないように、フィルターの交換を適切に行う必要がある。(ウ)展示ケースのガラス等は、十分な強度を持ったものを使用する。 また、地震等の災害や不慮の事故を考慮して、張り合わせガラス等を使用することなどは有効である。(エ)移動ケースは、重心の位置を低くし、横すべりなどの防止対策を講ずる必要がある。114資料
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